ハーメルンの旅行記
デュッセルドルフから車で片道2時間半ほど、ハーメルンという街を訪れました。突然ですが『ハーメルン』という言葉に聞き覚えはありませんか。ハーメルンはグリム童話『ハーメルンの笛吹き男(ネズミ捕り男)』の舞台になった街です。昔はやっかいものだったネズミたちですが、今ではこの街のシンボルとして至る所に可愛らしい姿を見せます。
インフォメーションセンターまで続くネズミの姿。
石畳に紛れるネズミのレリーフ。
定番のお土産、乾燥させたパンで作ったネズミ(食べれません)。
ここはネズミ捕り男の家です。「ねずみのしっぽ料理(実は豚肉)」が食べられるそうです。
そして、この建物の横を通る路地が舞楽禁制通りです。男による子どもの連れ去りは実際に起こった事件と語り継がれています。1284年6月26日に男が笛を吹いて子どもたちを連れ去ったため、この通りでは現在も音楽演奏が禁じられています。結婚式やお祭りのパレードもここ通る際には演奏を中断して静かに行進するそうです。
現在のハーメルンは立派な石造りの建物と、美しい木組みの家が入り混じるとても素敵な街です。
ハーメルンの歴史を学べる博物館もあります。笛吹き男はこんなにカラフルな服を着ていたようです。奇人であること間違いない。
ところで、ハーメルンの笛吹き男はとても怖いお話です。
どんなお話だったかといいますと、【結婚式の家】という建物で行われる仕掛け時計の人形劇が思い出させてくれます。この建物、もともと役場だったのですが、名前が「結婚」という単語(ドイツ語)にとても似ている発音の名前だったので、結婚式場と間違われること多く、「それならもう結婚登録場にしましょうか・・」となり、結婚式の家と現在呼ばれております。右側の建物に扉付きの窓があるのが見えますでしょうか。
ここが開いて、仕掛け時計の人形劇が始まります。毎日13:05、15:35、17:35に見ることができます。
中世のハーメルンの物語。この頃の都市はどこも不衛生で、特に製粉業が盛んだったハーメルンではネズミが溢れかえり、町の人たちの頭を悩ませていました。そんな中、派手でまだらな服を着た男が町に現れました。男は言いました「私はネズミ捕り男だ。代金を払えば町のネズミを退治してやろう。」ネズミの駆除に大変困っていた町の人は、この男に報酬を払うことを約束し、ネズミ退治を依頼しました。
すると男は笛を吹き鳴らして町中のネズミをおびき出し、そのまま川へ連れて行きました。
ネズミたちは1匹残らず溺れ死にました。笛吹き男は約束通り、ネズミを退治しました。
しかし、ハーメルンの町の人は報酬が惜しくなり、男への支払いを拒みました。男は非常に腹を立てて町を去っていきました。
しばらくたったある日、男は再びハーメルンに姿を現します。そして恐ろしい顔で笛を吹き鳴らしました。
すると今度は町中の子どもたちが出てきて、男の後に着いていきます。
男と子どもたちは姿を消し、二度と発見されることはありませんでした。
子どもの数は130人だった。足が不自由な子どもと耳が聞こえない子どもは町に残された。《おしまい》
というお話です。
このお話を私なりに解釈してみます。初めて読んだ感想は『約束は守りましょう』ってこと?と思いました。しかし、それだけじゃないともう少し考えてみます。このお話は『私たち人間の弱さ』を象徴しているのではないかと今は思います。一大事が起こり、そこに救世主が現れる。救世主はかなり怪しい人物で、報酬も払えそうにないが、簡単に問題が解決しそうだから頼んでみる。できなくても失うものないし。その安易な考えで私たちは大切なものを失う。笛吹き男の本当の目的は初めから報酬ではなく、男は子どもを狙った異常者だったのではとも思います。最後に障害を持つ子どもだけ残されたというは慈悲という解釈もあり得ますが、足が不自由なために集団についてこれなかった、耳が聞こえないので笛が聴こえなかったから町に残されたというただの現実、もしくは笛吹き男にとっては必要のない存在だったから助かったという、どちらにしても残酷な結果だったように思います。
ネズミ可愛い~!で終われないハーメルンの街です。「童話なんてどうせ作り話でしょ?」と思っていた私に『お話が映し出す現実世界』の存在を教えてくれました。グリム童話は教訓がすぐにはわからない。そして人が殺されたり、食べられたり残酷なものが多い。けれども、始めは「で?なに??」だった話が、自分なりに本質と思えるとこまでたどり着くと、忘れられない大切なお話に変わっていく。その変化がとっても不思議で楽しいものだと気づかせてくれたハーメルンの旅でした。